犬と猫の皮膚科

完全予約制ですのまずはお電話で予約をお願いします. 

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診察日:月,火,木,金(土曜日をご希望の方はご相談下さい)

午後3時から6時(水曜休診) 

診察日までに現在までの治療,検査を簡単にまとめて事前にお知らせ下さい.

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食事(メーカー,商品名),薬(わかれば名前),注射(何のための注射,例えば,痒みを止める注射など)など,わかる範囲で構いませんのでお持ち下さい 

検査結果があればお持ち下さい

他の病気,検査,治療歴も参考になりますので結果をお持ち下さい

料金:診察料1万円+消費税

診察後に,必要と思われる検査,治療についてご相談します 

追加の検査,治療,投薬などは診察料(1万円)とは別料金です

皮膚病の原因のほとんどは、感染症、寄生虫、アレルギーです。 

ところが、 

皮膚病の症状はどれも似たり寄ったりなので、 

皮膚病に詳しくない病院では原因がよくわからないまま治療して、 

よけいに症状が複雑になってしまうことがあります。 

なので、 

転院された方には根掘り葉掘りしつこく色んなことを聞きますが 

原因をできるだけ知りたいだけなのでお許し下さい。 

また、 

原因がわかっても、アレルギーのように 

「病気とうまくつきあっていく」ということが必要で 

病気とのつき合い方を皆さんに丁寧に伝えるのも大事に思います。 

1.頭部に主な症状がある 

2.身体に主な症状がある 

3.手足尾に主な症状がある 

4.皮膚の寄生虫 

5.シャンプー 

6.アレルギー 

7.犬アトピー性皮膚炎 

8.皮膚の腫瘍 

9.治療 (未記載)

10.内科疾患の症状が皮膚にあらわれる病気 (未記載)

11.皮膚の仕組みと薬用シャンプーの使い方

スキャン 101

頭部に症状がある

1. 頭部に主な症状がある。

1-1. 耳のあたりがかゆい

頭を振ったり、耳をこすったり、掻いたりしていますか?耳の中をみてください。耳あかで汚れたり、変な臭いはしませんか?耳にボツボツや,脱毛などがありませんか?次にあげた病気の可能性があります。

1-1-1. 外耳炎

耳の中に異物が入ると炎症が起こります。異物とはシャンプー、水、虫、草の種、砂などです。梅雨時から夏場にかけては,耳の中が蒸れて細菌やカビが繁殖して炎症を起こし易くなります。頭を激しく振ったり、手足で激しく掻くと耳が傷ついて炎症がさらにひどくなります。通常は一時的なもので何回か耳を治療すれば治りますが、細菌やマラセチアという酵母菌が異常繁殖した場合、抗生物質や抗酵母菌薬が必要です。炎症がひどい時にゴシゴシこすったり、耳毛を抜くとさらに炎症がひどくなります。外耳炎はとても痛い病気なので炎症がある間(赤くなっている時)はあまり耳を触らないようにしましょう。痛いときに痛いことをすると、普段から耳掃除ができなくなってしまいます。病院で炎症止めの治療をしてもらいましょう。また、耳の中に目に見えない小さなダニが寄生することもあります。黒くて乾いた耳アカをたくさんみつけたら、耳ダニの検査をしてもらいましょう。耳ダニがいたら1—2週間おきに耳ダニを殺す薬をつけます。耳ダニに対するアレルギーが起こると、治療後1か月以上も痒みが持続することがあるので、根気強く病院に通いましょう。

1-1-2. 中耳炎、内耳炎

鼓膜から外側を外耳、鼓膜から内側は中耳と内耳にわけられます。しつこい外耳炎の場合、中耳炎もしくは内耳炎を同時に起こしていることがあります。その場合,しつこい耳ダレ(耳のあたりをさわるとグチュグチュと音がする)と痛みがみられます。動物は頭を傾けていることがあります。耳の中を洗浄する場合は痛くてじっと我慢できないので全身麻酔が必要です。治るまで数ヶ月かかるので根気も必要です。大変ですががんばりましょう。

1-1-3. アレルギー性外耳炎

人の花粉症では鼻水や涙、クシャミが止まらなくなりますが、犬のアレルギーでは耳ダレが症状として多くみられます。鼻水はティッシュでチーンして出すことができますが、耳ダレは耳の中に貯まり細菌やカビが繁殖します。犬は耳を振ったり、手足で引っ掻くため傷ついてより強く炎症が起こります。再発性の外耳炎はアレルギーが関係していることが多いようです。治療は耳の中をきれいにすることが大事です。病院で耳の洗浄液をもらって,耳ダレをふきとりましょう。耳の中に洗浄液を直接入れるのはよくありません。再発性の外耳炎の場合,鼓膜が破れている場合が多く,洗浄液をいれると耳の奥の方に液が入ってしまい、中耳炎や内耳炎を合併し、かえってひどくなるからです。必ずティッシュかコットンを洗浄液で湿らせて丁寧にふき取ります。定期的に通院して,耳の中をチェックしてもらいましょう。炎症がひどい場合は抗生物質や抗酵母菌薬を使います。炎症が強い場合、早めにステロイドを使うと治りやすくなります。塗り薬と飲み薬がありますので,程度に応じて使い分けます。また食事も大きく影響し,アレルギー体質用のフードに変えた方がよくなることが多いようです。

1-1-4. 耳血腫

外耳炎で耳を振ったり、引っ掻いたりしてるうちに耳の血管が破れて、耳に血腫ができる病気です。大きな血腫の場合、手術して切開する必要があるでしょう。切開後も出血が続くため、しばらく包帯が必要です。血腫のできたところを縫合して耳の表側と裏側が癒合するようにしますが、再発しやすいので、何度か手術が必要になることもあります。治癒後は耳の形が変形しますので,耳がピンと立っている子は注意が必要です。

1-1-5. 蚊に刺されて

蚊は毛のない耳をねらって血を吸います。耳を蚊に食われたことはありますか?痒いってもんじゃないですよ。ほんとに。

1-1-6. 耳のポリープ、腫瘍

耳の中にポリープや腫瘍ができることがあります。耳先に腫瘍ができた場合、耳たぶを根本から切除しなければならないことがあります。

1-1-7. 耳の縁の黒いカス

ダックスフントやビーグルのような垂れ耳の犬でみられます。あぶらっぽい黒い汚れがこびりついてます。毛も抜けてしまいます。病院で診察してから薬用シャンプーで洗います。あまりゴシゴシ洗うと赤くただれてしまいます。

1-1-8. 耳の毛が薄くなってきた

ダックスフント,チワワにみられます。耳の毛だけが薄くなります。原因は不明で,両耳の毛が何年もかけてゆっくりと薄くなっていく場合もあれば、突然、薄くなる子もいます。毛が薄くなるのは寂しいですが,痒みがなければ本人は気にしません。シャム猫にもみられます。

1-1-9. 耳がちぎれて落ちた

人間でいう、しもやけみたいなことが耳で起こることがあります。気温が下がると耳の先に血栓ができて血管がつまり、耳先が腐って落ちてしまう特殊な病気です。

1-1-10. 耳にふけのようなものと、ブツブツがある

膿皮症といって皮膚表面が化膿しているかもしれません。細菌感染や、自己免疫性疾患の場合があります。猫で耳から顔にかけて厚いカサブタができて痒みも強いときは,疥癬(かいせん)という皮膚に寄生するダニが一番に考えられます.

1-2. 口のまわりがおかしい

口がくさい、口をよくこすってる、唇周囲が赤い,汚れがある,ヨダレが多いなど、口の周りに異常はありませんか?

1-2-1. 口の周りが臭い

口の周りは常に湿っぽいため、細菌が繁殖しやすいようです。ひどくすると、潰瘍やビランがみられます。薬を塗ってもなめてしまうので、なかなか治りにくい場所です。特に大型犬で唇がダラーンしている犬種でにおいが強く感じられます。薬用シャンプーと塗り薬を根気強く続ける必要があります。

1-2-2. 口の中が臭い

歯石や歯周病が原因で、口内炎ができてるかもしれません。歯が悪く歯槽膿漏になっているかもしれません。固いものや、しみるものを食べたとき痛がってませんか?ヨダレを垂らすことが多くありませんか?口の中をのぞけたらみてみましょう。また、人と同じように口内炎は胃が悪かったり、ストレスでなることがあります。潜在的な病気を持っていることもあります。猫の場合はウィルス感染で口内炎ができることがあります。

1-2-3. 歯石

歯に食べ物のカスがこびりついて,それが細菌の作用で石みたいに固くなったのが歯石です。歯石は細菌の巣です。歯石が増えると歯石の中の増殖した細菌を唾液と一緒に飲み込んで、細菌が全身を回って,腎臓や心臓に少しづつ巣を作ります。すると腎臓や心臓の病気になりやすくなります。また,歯が弱くては長生きできません。定期的に歯の検診をしましょう。

1-2-4. 口臭が強い

歯周病,胃炎,気管支炎などがあると、吐く息が臭くなります。嘔吐したり、咳をしたりしていませんか?病院で詳しく身体検査してもらってください。

1-2-5. 歯肉炎(歯ぐきの炎症)

唇をまくって、歯ぐきをみてみましょう。歯ぐきが赤くなっていたら、歯周炎といって、歯ぐきの炎症を起こしているかもしれません。ほっとくと細菌が歯の根本で増殖して歯がぐらぐらになってしまいます。ひどくなってから抜歯などをすると口の中の細菌が全身に広がります.悪くなる前に診察を受けましょう.また,歯磨きを習慣づけるようにしましょう。

1-2-6. 歯肉出血

リンゴをかじって歯ぐきから出血しませんか?というコマーシャルが何年か前にありました。あれは歯周炎で弱った歯ぐきから出血しているのです。病院で診てもらう必要があります。また、点状の出血が歯ぐきにみられることがあります。これは血液の病気や、血が止まらなくなる病気の可能性もあります。歯肉からの出血は怖い病気があるので毎日歯磨きするときに、必ず歯ぐきもチェックするようにしましょう。

1-2-7. ヨダレが多い

歯の間に何かが引っかかっていたり、歯石がたまっていたり、口内炎-歯周炎があったり、唾液腺の炎症があったり、気持ちが悪いとヨダレがが多くなります。もちろん、ごはんを「待て」してるときも、ヨダレはたくさんでてきます。

1-2-8. 唇の炎症

特に猫で好酸球性潰瘍といって白血球の一種の好酸球が唇をとかしてしまう病気があります。原因はよくわかっていませんが,食事やアトピー性皮膚炎が原因として疑われています。治療はステロイドを使用することが多いのですが、薬がきれると再発します。

1-3. 顎に黒い汚れが

猫では顎から皮脂が出るので、黒くこびりついて「アクネ」と呼ばれます。ひどくすると細菌が繁殖して炎症を起こしてしまいます。また、汚れているからといってシャンプーでゴシゴシこするとかえって炎症が強くなります。アレルギーでひどくなることがあります.結節状に盛り上がっている場合,腫瘍も考えられます.早めに病院で診察するようにしましょう。

1-4. 目がおかしい

目の周りが湿っていたり、目やにがいつもより多かったり、目の色が変だったり、掻いたりこすったりしていませんか?

1-4-1. 涙やけ

目の周りが涙で湿ってじゅくじゅくすることがあります。目の大きなシーズーや、涙管がつまりやすいプードルでよくみられます。いわゆる、涙やけといわれるものです。一日に何回か目ヤニをとってあげましょう。炎症や臭いがひどい場合,治療が必要になることもあります。市販の消毒薬はアルコールが入っているものがありますので、決して目の回りに使用するのはやめましょう。

1-4-2. 目の回り

目の周りの毛穴で小さなダニ(ニキビダニ)が見つかることがあります。特に子犬で目の回りにブツブツできてるときは注意します。病院で検査してもらいましょう。ダニは小さいので1回の検査では発見することが難しいので,何回か検査する必要があります。また,臨床的に疑わしいときは診断的にダニを殺す薬を使って様子を見ることもあります。

1-4-3. 目の周りから鼻にかけて

ブツブツやカサカサができることがあります。顔全体がブツブツ、カサカサしている場合は自己免疫性疾患の場合があります。

1-4-4. 目が赤い

涙や目ヤニが出て、目が赤く見えるときがあります。白目が赤いときは結膜炎、目の中心が赤いときは眼球炎(ぶどう膜炎),出血などの可能性があります。

1-4-5. 目がグリーンに見える

瞳孔が開いて眼球の奥がみえると、グリーンに見えます。暗いところでは瞳孔が開くので正常ですが、明るいところでもグリーンに見えるときは緑内障の可能性があります。

1-4-6. 目が白っぽく見える、目に膜が張ったように見える

白内障といって、目のレンズが濁ってしまう病気があります。ほとんどが年をとってから起こる病気ですが、若年性白内障といって、特に若い純血犬種でおこることがあります。また、角膜(目の表面)に炎症が起こると、角膜が白濁し、目が白く見えたり、膜を張ったように見えることがあります。アレルギーで目が腫れぼったくなって膜が張ったように見えるときもあります。その場合,痒みを伴います。

1-5. 鼻がおかしい

鼻は臭いをかいだり、物をいじったりするときに大事な役目をします。そのため、ぶつかったり、虫に刺されたりと擦り傷がたえません。また、鼻にみられる特殊な病気も多いです。

1-5-1. 鼻の炎症

穴を掘ったりしたときに、擦れたりして、炎症を起こすことが多いようです。また、臭いをかごうとして、たとえば蜂や毒虫に刺されることもあります。

カサカサしているときは角化亢進といって、皮膚表面が厚くなる病気です。日光性皮膚炎で皮膚がカサカサ、ジュクジュクしてるのかもしれません。

1-5-2. 鼻の色が変わった

通常、成長するに従って、色は薄くなっていきます。子供の時黒かったのに、だんだんとピンクに変わっていきます。また、特に女の子で、発情期に色が変わることがあるようです。もちろん、病気で色がうすくなることもあります。その場合は、たとえば毛の色が薄くなるとか、他の部位でも異常を伴うことが多いようです。

1-5-3. 鼻が乾いてる

寝てるときや眠いときは鼻は乾いています。元気に遊んでるときは濡れています。調子が悪かったり、熱があるときは起きている時でも鼻は乾いています。そういうときは見た目にも調子が悪そうです。すぐに病院で診察してもらいましょう。

1-5-4. 鼻水

動物は透明な鼻水をよく垂らしています。でも、ボタボタと大量に出ていたり、クリーム色や緑色に変わってきたら鼻の中に炎症があるかもしれません。赤いときは鼻出血があるのです。また、蓄膿症といって鼻の奥の方の副鼻腔というところに膿瘍があるかもしれません。悪性のウィルス病に感染しているかもしれません。上顎の歯槽膿漏で膿が鼻から出てくることもあります。レントゲン検査や内視鏡で検査してもらいましょう。

1-5-5. くしゃみ

鼻の中がムズムズするとくしゃみが出ます。花粉の季節や、水やゴミが鼻に入ったり、あるいは上顎の歯槽膿漏で鼻がムズムズしてるのかもしれません。

1-5-6. 鼻の発作

寝ていたり、暖かい部屋から冷たい外に出たとき、水を飲んでいるときに、突然鼻か喉に何か詰まったようにフゴー、フゴー、と苦しがることがあります。鼻痙攣や逆クシャミと呼ばれる症状で、くしゃみの逆です。くしゃみはハックションと息を吐き出しますが、逆クシャミは息を吸い込みながらの発作です。ビデオにとって病院で診てもらいましょう。しばらくほっておけば治りますが、中には呼吸ができなくて倒れてしまうこともあります。発作がひどい場合は、手術が必要です。肥満に伴って起こり易くなりますが、短頭種では肥満していなくても起こります。

身体に症状がある

2.身体に主な症状がある。

2-1.身体の脱毛

脱毛している事に気づいたら、まず最初に、毛が自然と抜け落ちているのか、あるいは掻いたりこすったりして、毛が抜けてしまったのかを調べなければなりません。毛を引っ張ってみて、簡単に抜けるようなら毛根に問題があるのです。毛根の主な病気はカビ、毛包炎、ニキビダニ、内分泌疾患などです。毛を引っ張っても簡単に抜けない場合は、掻く行為によって結果的に毛が抜けているか、毛の途中ですり切れているか、です。

2-1-1.部分的にちょっと脱毛している

毛をかき分けて皮膚をよく見てみましょう。ブツブツやカサカサはありませんか?ノミやダニのせいかもしれません(ノミ・ダニの項目へ)。細菌やカビのせいかもしれません。アレルギーの可能性もあります(アレルギーの項目へ)。皮膚は清潔にしていますか?シャンプーしたのはいつでしょう(シャンプーの項目へ)?あなたも髪の毛を何日も洗わないと頭が痒くなりますよね?動物も一緒なのです。何日もお風呂に入らないと体は痒くなります。と、ここでいきなりシャンプーしないでくださいね。シャンプーには低刺激なものから刺激の強いものまでたくさんあります。うちは薬用シャンプーだから大丈夫って?あぶない、あぶない。薬用ならなおさら、適応症というのがあります。まず動物病院で診察して、最適なシャンプーを選んでもらいましょう。すぐに病院に行けない場合は、低アレルギーの抗菌シャンプーが無難です。ノミがいる場合(ノミ・ダニの項目)、ノミ取りシャンプーは殺虫剤成分が含まれていますので、ノミは死にますが、皮膚炎がある場合、皮膚にはよくありません。まずはノミを殺して、皮膚病を治して、それからシャンプーです。

2-1-2.頸周囲の脱毛

首輪や胴輪をしていませんか?擦れているのかもしれません。首輪や胴輪の素材によるアレルギーかもしれません。首輪や胴輪は汚れていませんか?臭いをかいでみましょう。臭かったら、はずしてきれいなものに交換してあげましょう。ノミ取り首輪も原因になります。これも、はずしましょう。食べ物による何らかのアレルギーも考えられます。ここ1週間に食べたものをリストアップしてみましょう。最近、シャンプーしていませんか?首の内側はシャンプーのすすぎ不十分でよく皮膚病ができる所です。まさか、首輪をしたまま洗ってませんよね?頸の背中側の場合、ノミダニのせいかもしれません。ノミダニはいませんか(ノミダニの項目へ)?最近その辺に注射や薬を塗っていませんか?薬によるアレルギーかもしれません。

2-1-3.腰のあたりの脱毛

ブツブツはありませんか?一番多いのはノミアレルギーです。ノミを探しましょう(ノミの項目へ)。ノミはとてもすばやいので見つけるのは難しいでしょう。そのかわり、ノミがいたという証拠を見つけることができます。皮膚のかき分けて、付け根に黒いカスみたいのがありませんか。それはノミの糞です。皮膚は汚れていませんか?シャンプーしたのはいつでしょう。その辺は脂腺の密集地帯です。脂腺の炎症かもしれません。

2-1-4.下腹部を中心に脱毛

特に猫できれいに毛がなくなってしまうことがよくあります。かゆいと猫はしつこくグルーミングをして毛を全て舐め切ってしまいます。一番にアレルギーが考えられます。ノミはいませんか?食事はどうでしょう。安売りのペットフードや脂でギトギトの不健康そうな食事をとっていませんか?また、ストレスで異常にグルーミングをして毛を舐め切ってしまう猫もいます。多頭飼育だったり、他の猫にいじめられたりしていませんか?野良猫の発情の季節ではありませんか?近所がうるさいとか、家族の誰かが病気だったりしませんか?猫が妊娠時には赤ちゃんにオッパイを出すために下腹部を中心に毛が抜けますが、離乳すればすぐに毛が生えてきます。ホルモン性疾患,特に副腎皮質機能亢進症で下腹部が膨らんで,脱毛がみられることがあります。その場合,異様な食欲とたくさん水を飲むということに気付いているかもしれません。

2-1-5.全身の脱毛、あるいは全身性にまだらに脱毛している

ホルモン性疾患,感染症,寄生虫,自己免疫疾患,栄養性,アレルギー,中毒,内臓疾患など多くの病気が考えられます。病院で診察してもらいましょう。

2-1-6.トリミングや手術後に毛が生えてこない

トリミングや手術で毛を刈った後,なかなか毛が生えてこないことがあります。皮膚もだんだんと黒ずんできます。特にポメラニアンとその類縁種で多いのですが,ホルモンのバランスが悪いため毛が生えてきにくいようです。効果的な治療はありません。雄の場合,去勢手術で再び毛がはえてくることがあります。薬はビタミン剤や皮膚の血行をよくするようなお薬,ホルモン剤を使います.2-3ヶ月ごとに発毛の様子を見ながら薬を変えたり食事のご相談をします.おしり周りと尾は発毛が弱いのですが被毛が伸びるとある程度隠すことができます.外観上見栄えが悪ければ洋服を着せてお散歩に行くようにお話ししてます。

2-1-7.急にじゅくじゅくになった

皮膚が突然赤むくれになって,汁が出てじゅくじゅくして見た目にも痛そうになることがあります(急性皮膚表層性皮膚炎)。ノミが原因になることが多く,まず,傷を洗浄し炎症を抑えます。それから,ノミを徹底的に予防します。特に猫で好酸球潰瘍といって白血球の一種の好酸球が皮膚をとかしてしまう病気があります。原因は不明であることが多いのですが,食事やアトピー性皮膚炎が原因として考えられています。治療はステロイドを使用することが多く,時に外科的に切除します。

手,足,尾に症状がある

3.手・足・尾に主な症状がある

3-1.手の甲

子供の指しゃぶりと同じで、退屈だったり、ストレスを感じていると手の甲をなめたりかじったりして皮膚病になります。

3-2.肘(ひじ)、踵(かかと)

体重があると(太ってる場合も)肘と踵に負担がかかってタコができます。人間の肘と踵も皮膚が厚くてガサガサしているのと同じです。タコ自体は心配ありませんが,ぶつけたり,とげが刺さったりして,化膿することがあります。

3-3.手足の指の間

動物は裸足で歩くので手足にとげが刺さったり,ガラスで切ったりすることが多いようです。土から細菌が皮膚の傷口から侵入して化膿することもあります。また,指の間に毛が生えているので,夏場は蒸れやすく,真菌が繁殖し水虫になることがあります。家族に水虫の人はいませんか?人の水虫は動物に感染します。赤く腫れてただれている場合,痛みを伴っていることが多く,足を洗う時にさわられるのをいやがります。アレルギー性皮膚炎の場合は外耳炎や他の場所で皮膚炎があることが多いです。

3-4.爪

爪の根本に炎症がある場合、細菌感染や真菌感染が考えられます。爪がぽろぽろ抜ける場合は自己免疫性疾患,栄養障害の可能性があります。

3-5.脇

赤くなっていたり、ブツブツがある場合、アレルギー、細菌感染や酵母菌の可能性があります。

3-6.内股と大腿部

赤くなっていたり、ブツブツがある場合、アレルギー、細菌感染や酵母菌の可能性があります。猫では好酸球潰瘍といって白血球の一種の好酸球が皮膚をとかしてしまう病気があります。原因は不明であることが多いのですが,食事やアレルギー性皮膚炎が原因として考えられています。治療はステロイドを使用します。

3-7.尾の皮膚病

尾に炎症がある場合,ノミが原因であることが多く、ノミ予防をお勧めします。また犬では脂腺の炎症が起こりやすいので膿色のかさぶたが多い場合は,細菌感染が疑われます。自分で咬んで毛を抜いている場合は,アレルギーや精神的なストレスが疑われます。皮膚が盛り上がっている場合は,腫瘍を疑います。脱毛だけが見られる場合は,甲状腺機能低下症,性ホルモン失調症,副腎ホルモンの不均衡(アロペシアX,クッシング病)などが疑われます。

皮膚の寄生虫

4-1-1.ノミの生態

4-1-1-1.驚異的なノミの繁殖力

10匹のノミは1カ月で2000匹に増えます。ノミの巣には9万個の卵と10数万匹の幼虫がうごめきます。

4-1-1-2.ノミはどこからうつってくるの

ノミは他の犬猫や草むらからうつります。トリミングやホテルに預けると、ノミの予防をしてないワンちゃん、猫ちゃんからうつります。病院に入院するときもノミの予防をしてあるかどうかを確認する病院がよい病院です。

4-1-1-3.ノミの巣

室内ではじゅうたん、畳、家具、冷蔵庫の裏にノミの巣ができます。屋外では犬小屋の下、毛布の下に巣を作ります。動物の寝場所やホコリのたまりやすい場所は特に念入りに掃除をしましょう。

4-1-1-4.ノミってどんな形

ノミを見たことのない方もたくさんいるようです。ノミはとても早く動くので見つけるのは難しいでしょう。ノミはみつけられなくても、ノミがいれば糞をしますので、ノミの糞を探してみましょう。背中から腰周辺の毛をかき分けて毛の根本をよくみてみましょう。糞は黒くて細かい垢のようにみえます。ノミの糞は血液からできているので水に浸したティッシュの上に載せるとティッシュが薄く赤く染まります。垢は赤くならないのですぐわかります。

4-1-2.人の被害

4-1-2-1.ノミは人の血も吸います

蚊に刺されるよりも痒く、治りにくいようです。寝ている間に足などをくわれたり、おなかの軟らかいところを刺されます。赤ちゃんや小さい子供がいる家庭では注意しましょう。

4-1-3.ペットの被害

4-1-3-1.貧血で倒れることがあります

ノミがたくさん寄生すると、毎日たくさん吸血され,出血したのと同じくらい血液を失ってしまいます。ひどい場合,輸血が必要なこともあります。

4-1-3-2.毛づやが悪くなります

吸血されると栄養が失われ、毛づやが悪くなります。痒いが強いので爪で引っ掻いたり、歯で噛んだりしてひどい皮膚病になります。

4-1-3-3.ノミの吸血と痒みでイライラします

常に痒いのでイライラして人を噛んだり吠えたりします。

4-1-3-4.ひっかいて化膿性皮膚炎になります

ノミにくわれると非常に痒く,爪で引っ掻いたり、歯で噛んだりして、皮膚が裂け、出血します。夏場はバイ菌が繁殖しやすく,グチュグチュして赤くただれて汁が出てきます。

4-1-3-5.ノミに吸血されてアレルギー性皮膚炎になります

ノミは吸血するときに自分の唾液を注入します。その唾液がアレルギーの原因となりますが,ある程度体内に蓄積しないとアレルギーは発症しません。一度、発症すると、ノミ以外にもアレルギー反応を起こし、治療にも数週間の時間がかかります。

4-1-3-6.ノミは寄生虫を媒介します

ノミがいると動物は身体を舐め、その時、ノミが口から体内に入ると、ノミからサナダムシという寄生虫が感染して、おなかの中で増えます。

4-1-4.ノミの予防

ノミの予防薬を使っているのに、なかなかノミがいなくならない場合は、使っている薬の効果が低いか、家の中(犬小屋も含めて)にノミの巣があるのかもしれません。ノミは卵を産んでどんどん増えていきますので、成虫だけを駆除しても、卵(ノミの巣)が残っていれば効果ありません。その場合、成虫を殺す薬と卵を殺す薬を同時に使うことをお勧めします。ノミを殺す薬は体に害がある物が多く、中毒を起こすこともあります。必ず獣医師に相談するようにしましょう。

4-2.ダニの駆除・予防

4-2-1.ダニの感染経路

ダニは雨が降っている間は土の中に隠れていて、晴れると草の先まで登ってきて動物がやってくるのを待っています。雨上がりの晴れた翌日に草むらに入っていくと、小さなダニがいっぱいついてきますので、注意しましょう。猫は体をグルーミングできれいにするのでダニがついても食べてしまいます。犬は飼い主さんが見つけてびっくりして病院につれてくることが多いですね。吸血しているダニを無理に引っこ抜くと後ですごく腫れて痒くなります。できれば病院でとってもらいましょう。

4-2-2.ダニに注意

雨上がりの日は特に草むらに入らないように気をつけましょう。また、散歩から帰ってきたらブラッシングするかタオルで体を拭いてあげましょう。

4-2-3.ダニは病原体の運び屋です

ダニがたくさん寄生するとひどい貧血を起こしたり、痙攣を起こしたりします。ダニにかまれるとツツガ虫病という高熱が出る病気やバベシア症という赤血球を破壊する病気になることもあります。

4-2-4.ダニの予防

ほ乳類(人、犬、猫など)には害はなく、昆虫のみに効果のある殺ダニ剤を使用したものが安全でお勧めです。動物についたダニは、しばらく毛の上をフワフワと歩いて吸血する場所を探します。その間にダニは予防薬に触れて死んでしまいます。ダニの予防薬は動物用医薬品となりますので獣医師に相談しましょう。

4-3.疥癬(かいせん)

猫は猫小穿孔ヒゼンダニ(猫疥癬),犬は犬穿孔ヒゼンダニ(犬疥癬)が原因で,激しい痒みが特徴です。猫疥癬は人にはうつりませんが,犬疥癬はうつることがあります。犬疥癬と診断され,自分の皮膚にもポチポチと湿疹がみられたら人間の皮膚科病院に行きましょう。

4-4.耳疥癬(耳ダニ)

犬猫の耳の中に耳ヒゼンダニという耳ダニが寄生することがあります。肉眼ではほとんどわかりません。慣れた獣医師なら顕微鏡で確認する前に見つけられます。このダニはとても感染力が強いので他の動物から簡単に接触感染します。ダニがいなくなってからも数カ月間,耳ダニのアレルギーで痒みが持続することがあるので,根気強く病院に行きましょう。

4-5.シラミ

不衛生な環境で感染します。白いフケの様なものがある時は病院で獣医師に診てもらいましょう。

4-6.ハエウジ

皮膚病で汁が出ていたり、下痢がひどくておしりが汚れている場合などにハエが卵とウジを産み付けます。ウジは皮膚を食い破り,激しい皮膚炎を起こします。動物は毒血症で死んでしまうこともあります。

4-7.ニキビダニ

毛包虫ともいわれ,皮膚の毛穴に住んでいます。犬でも人でも健康な皮膚にも正常にみられます。通常は何ら問題ないのに体の抵抗力が弱いと発症します。犬でよくみられ,猫ではまれです。若い動物で,免疫力が未発達なときによくよくみられます。治療しなくとも動物の成長とともに自然に治ることが多いようです。中齢以降でみられた場合はちょっと問題です。通常,大人の免疫力が弱いというのは何らかの病気を持っているからです。潜在的な病気が隠れていないか精密検査が是非必要です。

シャンプー

 人間は毎日お風呂に入らないと体が痒くなります。お風呂に入らないと、髪の毛はフケが出たり、ベタベタして気持ちが悪くなるでしょう。動物も同じです。お風呂に入るのは毎日では多いけど、ブラッシングをしたり、体を拭いてもらって、さっぱりしたいのです。

 ただ、動物の被毛と皮膚はとてもデリケートなので、丁寧に扱わなくてはなりません。ウールのセーターを丁寧に扱うのと同じようなもので、注意点がいくつかあります。シャンプーにはいろいろなタイプがあり、それぞれ目的が違います。もちろん人間用のシャンプーは、赤ちゃん用も含めて、使用しない方がよいでしょう。お店のペットコーナーで売られている市販のシャンプーは汚れを1回で落とせるよう、強いシャンプーが多いので、皮膚病があるようなときは注意しましょう。特にノミ取り成分が配合してあるものや、薬用と書いてあるものは注意事項をよく読んで、わからなければ獣医師に相談してから使用しましょう。

5. シャンプー

5-1.長毛タイプ

5-1-1.サラサラしている:シルキー・ヘアー

(アイリッシュ・セッター、ヨークシャ・テリア、ロングコート・ダックスフント、ロングコート・チワワ)

洗う前に丁寧にブラッシングをし、毛のほつれや毛玉を取り除きます。ブラッシングが終わったら、ぬるま湯で首から下をよく濡らします。シャンプーは低アレルギー性で脱脂作用の少ないものを使用します。リンス成分が含まれているものが使いやすいでしょう。シャンプーを手に取り少し揉んでから体につけます。シャンプーを直接つけてはいけません。ゴシゴシ洗うと毛がチリチリになってゴワゴワになってしまいます。丁寧にもみ洗いしましょう。顔は、目と耳にシャンプーが入らないように十分に気をつけながら洗います。嫌がるようならタオルに薄くシャンプーをしみこませ、軽くこすり洗いをします。洗い終わったら、ぬるま湯でシャンプーを十分に落とします。特に首の下、脇の下、内股はシャンプーが残りやすいので念入りに。すすぎ終わったらタオルで水気をよく拭き取ります。ドライヤーは体から離して、動物が熱く感じないよう、ドライヤーと皮膚の間に自分の手を当てながら乾かします。ある程度乾いたら、櫛で毛を起こすようにドライヤーを当てると、毛の根元を乾かすことができます。

5-1-2.シットリしている:モイスチャー・ヘアー

(アフガン・ハウンド、イングリッシュ・セッター、オールドイングリッシュ・シープドッグ、キャバリア、ゴードン・セッター、コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリーバー、サモエド、シーズー、シェットランド・シープドック:シェルティ、スピッツ、チベタン・マスチフ、パピヨン、バーニーズ・マウンテンドッグ、ピレニアン・マウンテンドッグ、ビション・フリーゼ、フラットコーテッド・レトリーバー、ボルゾイ、ボーダー・コリー、マルチーズ、ラサ・アプソ、ラフ・コリー)

洗う前に丁寧にブラッシングをし、毛のほつれや毛玉を取り除きます。ブラッシングが終わったら、ぬるま湯で首から下をよく濡らします。シャンプーはフケがよく落ちるように脱脂成分が含まれているものを選択します。シャンプーを皮膚に直接つけてはいけません。シャンプーを手に取り少し揉んでから体につけます。泡だったシャンプーが毛になじんだら、ノミとり櫛などの目の細かい櫛で毛をすき、毛にまとわりついているフケやホコリを丁寧にとります。ただし、櫛で皮膚をこすりすぎてはいけません。赤くただれてしまいます。顔は、目と耳にシャンプーが入らないように十分に気をつけながら洗います。洗い終わったら、シャンプーはぬるま湯で十分にそそぎ落とします。特に首の下、脇の下、内股はシャンプーが残りやすいので念入りに。すすぎ終わったらタオルで水気をよく拭き取ります。ドライヤーは少し体から離して動物が熱く感じないよう、必ず手を当てながら乾かします。

5-2.密毛タイプ

(秋田犬、アラスカン・マラミュート、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ウェルシュ・コーギー、エアデール・テリア、甲斐犬、ケアンテリア、柴犬、シベリアン・ハスキー、シェパード、スコティッシュテリア、フォックス・テリア、スタンダード・プードル、ベドリントン・テリア、ポメラニアン、ミニチュア・シュナウザー、ワイアーヘアード・ミニチュア・ダックスフント)

被毛が厚く密生し、飾り毛が豊富、冬にはアンダーコートがたっぷりと生え二重毛となる犬種です。洗う前によくブラッシングをし、毛のほつれや毛玉をすいておきます。まず、ぬるま湯で首から下をよく濡らします。シャンプーは角質溶解作用と、脱脂作用があるシャンプーを使用します。毛が密で深いため、毛の根本までシャンプーが浸透するまで全身をよくもみ洗いします。泡だったシャンプーが毛になじんだら、普通の櫛で毛をすき、毛にまとわりついているフケやホコリをとります。櫛で皮膚をこすりすぎてはいけません。赤くただれてしまいます。顔は、目と耳にシャンプーが入らないように気をつけながら洗います。洗い終わったら、シャンプーはぬるま湯で十分にそそぎ落とします。特に首の下、脇の下、内股はシャンプーが残りやすいので念入りに。すすぎ終わったらタオルで水気をよく拭き取ります。ドライヤーは少し体から離して動物が熱く感じないよう、必ず手を当てながら乾かします。櫛あるいはスリッカーを使用しながら乾かすときれいに仕上がります。

5-3.短毛タイプ

普段はドライだが、興奮すると汗っぽくなる

(グレイハウンド、グレート・デーン、スムース・ダックスフント、ダルメシアン、チワワ、土佐、ドーベルマン、パグ、バセット・ハウンド、ピット・ブル・テリア、ビーグル、ブル・ドッグ、ポインター、ボストンテリア、マスティフ、ミニチュア・ピンシャー、ボクサー、ラブラドール・レトリーバー、ワイマラナー)

シャンプーは低アレルギー性で、脱脂作用の比較的弱いものを選択します。シャンプーを皮膚に直接つけてはいけません。シャンプーを手に取り少し揉んでから体につけます。皮膚を揉むようにシャンプーを皮膚に刷り込みます。顔は、目と耳にシャンプーが入らないように気をつけながら洗います。洗い終わったら、シャンプーはぬるま湯で十分にそそぎ落とします。特に首の下、脇の下、内股はシャンプーが残りやすいので念入りに。すすぎ終わったらタオルで水気をよく拭き取ります。ドライヤーは少し体から離して動物が熱く感じないよう、必ず手を当てながら乾かします。

5-4.皮膚病があるときのシャンプー

薬用シャンプーを使用します。薬用シャンプーには抗菌剤入り、抗カビ剤入り、殺ノミ剤入り、硫黄入り、サルファサリチル酸入り、タール入りなど様々です。皮膚の状態で薬用シャンプーがちがいますので、必ず獣医師に診察してもらいましょう。皮膚病で来院するときはシャンプーせずにそのままの状態を診てもらうのがよいでしょう。市販の薬や他の病院からもらった薬を使っていたら、持っていってみてもらいましょう。

アレルギー性皮膚炎

6.アレルギー性皮膚炎

6-1.食物アレルギー性皮膚炎

 食物アレルギーの原因となるのは蛋白質,炭水化物などで,よくいわれる防腐剤などに対するアレルギーは少ないようです。犬は顔や,脇から下腹部にかけて,猫では顔を中心に痒みがみられます。アレルギーの原因となる食事成分は、血液検査である程度わかりますが、完全に除去するのは非常に難しいでしょう。

 症状が軽い場合には、アレルギー専用の病院用処方食を使用します。それでも痒みが続くようなら、 今まで食べたことのない食事だけを3週間ほど続けて、腸をきれいにしてから、1種類づつ何かを足していきます。そうやって根気強く,食べても大丈夫な食品を探していきます。痒みがひどい場合は ステロイドや抗ヒスタミン剤などを使用することもあります.

6-2.ノミアレルギー性皮膚炎

 ノミが吸血するときに、犬猫の体内にノミの唾液が残り、それがある程度蓄積するとノミアレルギー性皮膚炎が発症します。ノミアレルギー性皮膚炎は発症する犬猫と発症しないものがいます。ここら辺が理解しにくいので診察室では「ビール」に例えて説明しています。ビールをコップ1杯飲んだだけでも酔っぱらってしまう人もいれば,10杯飲んでも平気という人もいるのと同じす。つまり個体差があって,アレルギーの許容量が動物によって違うのです。ノミ1匹分の唾液でもアレルギーが起こることもあれば,ノミ10匹分でも平気な場合もあるのです。

 ノミアレルギー性皮膚炎の症状は、主に腰背部にブツブツやカサカサがみられ,非常に強い痒みを伴います。掻き崩して細菌が感染してグチュグチュに赤くただれてしまうこともあります。毛が抜けてバサバサになることもあります。

 診断はノミを見つければよいのですが,吸血したノミはどこかにいってしまうので、ノミがたくさんいないと見つからないこともあります。皮膚病にあまり詳しくない病院ではノミがいないからノミアレルギー性皮膚炎ではないと診断されることがよくありますし、ノミも見つからず、飼い主さんが「うちの子にノミなんかいるわけない」と言い張られるとなかなかノミアレルギーとはいえなくなります。

 治療はノミの完全な駆除が必要です。そして,ステロイドが3週間程度必要になります。ノミの予防をずっとさぼっているとある程度年齢がいってから発症します。こういう場合,ほとんどの飼い主さんはため息混じりにこういいます。「今まで平気だったのに」。そうです。ビール一杯で酔っぱらうことがなかったとしても、今がビールを10杯飲んで酔っぱらってしまった状態なのです。

6-3アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎は強い痒みを伴います。こすったり,掻き崩して,細菌が増殖すると皮膚炎がよりいっそうひどくなります。病変は眼周囲,口唇周囲,喉,脇の下,股,指の間によくみられます。

 治療はシャンプーとステロイドを中心に,抗ヒスタミン剤や脂肪酸製剤を補助的に使用します。食事管理を取り入れることも大事です。アトピーというのは体質なので治ることはありません.ですから,完治を目指すよりバランスを取ることが大事です.特に,ノミアレルギー,食事アレルギーなどが合併すると痒みがひどくなりますので,トータルでの判断がとても大事です.治療は、ステロイドが中心となりますが,いかにステロイドの量を減らしてうまくコントロールしていくか,ということです.ステロイドの量を少なくするには家族の協力が不可欠です。適切なシャンプー療法とスキンケア,食事と環境の改善、そして投薬療法です。

 治療で大事なのは、軽度でも痒みが出たら、掻き崩す前にステロイドを使うことです。痒みが強くなってからステロイドを使うより、結果的にステロイドの使用量を減らすことができるのです。犬種的に柴犬やシーズー犬はアトピー体質で,ステロイドを使わないと痒みが抑えられないことが多いようです。最近では、副作用の少ない免疫抑制剤が発売されていますが、高価なのが残念です。

 減感作療法とは、アレルギーの原因となっている物質(花粉やダニなど)を体に少しずつ注射して体に慣れされるという方法です。この治療はアトピー性皮膚炎を「治す」治療を意味する根治療法です。治療の基本は早期発見、早期治療が原則で、アトピー性皮膚炎も、皮膚の状態がひどくなってから減感作療法を行うよりも、酷くなる前に診断し治療を開始する事が大事です。減感作治療をご希望の方は診察時にそのようにお伝え下さい。

犬アトピー性皮膚炎

7. 犬アトピー性皮膚炎

2011年9月17日 日本臨床獣医学フォーラム基調講演(ホテルニューオータニ東京)

みんなで一緒に考えよう犬アトピー性皮膚炎とのつきあい方

Let’s share our thoughts-How to manage canine atopic dermatitis

太刀川史郎(たちかわしろう)

たちかわ動物病院

(講演の目的)

・犬アトピー性皮膚炎について診断と治療について学ぶ

・症例を紹介しながらアトピー性皮膚炎とのつき合い方を理解する

 

(キーポイント)

・犬アトピー性皮膚炎は身体が痒くなる病気だが、痒い皮膚病は他にもたくさんある

・犬アトピー性皮膚炎を診断するための特殊な検査はないので、診察が重要である

・犬アトピー性皮膚炎に対する特効薬はないので、皮膚の状態にあわせて治療を変える

(クライアント指導の要点)

 ・ 犬アトピー性皮膚炎は完治を目指すのではなく、うまくつき合っていくことが大事である。

(要約)

 犬アトピー性皮膚炎は身体が痒くなる病気だが、身体が痒くなる病気は他にもある。また、犬アトピー性皮膚炎は他の病気を併発することで症状が発現しやすくなり、悪化するため、まずは併発疾患をしっかりと治療する事が必要である。講演では、 犬によって、併発疾患、症状の程度が違うことを紹介し、個々の病態に合わせてご家族と相談しながら治療する事が大事である事を一緒に学びたいと思う。

(キーワード)犬アトピー性皮膚炎 痒み

犬アトピー性皮膚炎とは

 遺伝すると考えられており、環境中に存在する様々な物質に身体が過剰に反応し、 特徴的な臨床症状を示す(表1.)。皮膚に炎症をおこし、痒みを伴う。多くはIgE(アイ・ジー・イー)というタンパク質が関係している。IgEが関与していない場合、犬アトピー様皮膚炎と呼ぶ。

犬アトピー性皮膚炎は身体が痒くなる

 犬は痒いときにどのような行動をとるかというと、身体をこすったり、歯で痒いところをかじったり、爪で引っ掻いたり、身体をブルブル震わせたりする。ちょっと掻くだけならよくあることだけど、痒みが長引くと皮膚が傷つき、出血し、毛が抜けてしまう。慢性化した皮膚の状態を診ただけでは原因がわかりにくくなってしまうので、痒くなった経過をご家族に教えてもらう事がとても大事なんだ。

痒い皮膚病はたくさんある

 痒い皮膚病には、アトピー性皮膚炎だけでなく、ノミやダニなどの皮膚に感染する寄生虫、細菌感染症、マラセチア感染症がある。 食べ物に対するアレルギーも身体が痒くなる。  そして、これらは犬アトピー性皮膚炎と一緒に起こると、皮膚炎の症状を悪化させるので、犬アトピー性皮膚炎の治療をする前に、できるだけ他の皮膚病を治しておく必要があるんだ。

犬アトピー性皮膚炎の診断は難しい

 ノミを見つけることができれば身体が痒い原因はノミだと分かるが、ノミが見つからないこともある。ダニは目に見えるものもいるが、顕微鏡を使わないと見えないダニもいる。細菌は健康な犬の皮膚にも存在するから、痒い犬の皮膚に細菌を見つけても細菌が原因で痒いとはいえない。マラセチアも同様だ。食物に反応して皮膚病が起こる事もある。犬アトピー性皮膚炎はこれらの痒い皮膚病を治療してもなお、痒みがあるときに診断する事が出来る。

犬アトピー性皮膚炎とIgE(アイ・ジー・イー)

 アトピー性皮膚炎と診断された多くの犬にIgEというタンパク質が検出されたので、犬アトピー性皮膚炎を診断するためにはIgEを検査すれば分かるのではないかと考えられた。だけど、 犬アトピー性皮膚炎と同じ症状なのにIgEが検出されない事もあるし、健康で皮膚病がないのにIgEが検出されることもある。このことはIgEの検査だけでは犬アトピー性皮膚炎を診断する事にはつながらない、ということを意味している。

犬アトピー性皮膚炎の治療(表2.)

 犬アトピー性皮膚炎の原因はひとつではなく様々な要素が複雑に絡み合って痒みという症状が出ている。 ほとんどの犬が若い時に発症し、10歳を超えてもずっと治療が必要となることも多い。 治療はずっと同じではないし、皮膚の状態によって治療法を変えていかなければならない。特に慢性化した場合は身体の状態は複雑なので、ご家族の協力がなくては適切な治療をすることが難しい。

グルココルチコイドとシクロスポリン

 犬アトピー性皮膚炎と診断されたら、痒みを抑えるためグルココルチコイドが投与されることが多い。効果はあるが喉が渇く、お腹がすくなどの副作用があり、その結果、トイレが近くなったり、太ったりする。投与が長期になると肝臓が腫れてくることがある。その時にはシクロスポリンが痒みを抑えるために投与される。グルココルチコイドに比べて効果が出るのに時間がかかるのと高価なのでセカンドチョイスとなることが多い。

IgE の検査とアレルゲン特異的免疫療法

 ハウスダストマイトに対するIgEとか、花粉に対するIgEとか、決まった物質に対するIgEがある。IgEが検出された物質をアレルゲンといいい、そのアレルゲンをほんの少しずつ投与して身体に慣れさせて痒みを抑える特殊な治療方法だ。

グレート・ピレニアン・マウンテン・ドッグのテラちゃんの場合

 男の子のテラ(1歳)ちゃんは、生後半年からお腹に赤いブツブツができて一日中身体をかいていた。病院でアレルギーといわれてアトピー性皮膚炎の薬を飲んでたけど痒いのは止まらず赤いブツブツがお腹から胸、四肢にまで広がって来た。

ボストン・テリアのムーンちゃんの場合

 男の子のムーンちゃん(6歳齢)は、2歳齢のときに四肢の指の間が赤くなったがグルココルチコイドですぐに良くなった。5歳齢のときに再発し指の間と口の周りが赤くなって来院した。ハウスダストマイトに対して皮内検査では陽性となったが、IgE検査は陰性であった。その後、だんだんと悪化し、指の間から出血してしまった。

秋田犬の北の大地くんの場合

 男の子の北の大地(10歳齢)ちゃんは、2-3歳齢頃からお腹にぶつぶつができて、耳もパタパタいつも痒そうだった。病院ではお風呂に入ることを禁じられていたので身体がいつもベタベタしていた。薬を飲んでもほとんど改善は見られなかった。当院に来院後にすぐにシャンプーしてさっぱりしてもらい、抗生剤とグルココルチコイドで以前より痒みは減ったが、ペチャペチャおなかを舐め続けている。

フレンチ・ブルドックの空(そら)ちゃんの場合

 男の子(去勢手術)の空( 3歳齢)ちゃんは、生後半年くらいから指の間が痒くなって通院するようになった。その後、耳や身体が赤くなり、散歩すると顔に赤いブツブツができるようになった。

日本犬のマリちゃんの場合

 女の子のマリちゃん(3歳齢)は、生後半年から指の間が赤くなって通院するようになった。IgE検査でハウスダストマイトが検出されたので、お気に入りのソファーを捨てられてしまった。 家族がくしゃみするのは治ったけど、マリちゃんの指の間は痒いままだ。

シー・ズー犬のメイちゃんの場合

 女の子のメイちゃん(11歳齢)は、2歳齢の時に犬アトピー性皮膚炎と診断された。年々ひどくなったので6歳齢の時に病院を変えた。治療でだいぶ良くなっていたが薬をやめると皮膚が赤くなり痒くなっていた。10歳齢の健康診断でコレステロールと中性脂肪、肝臓の異常がみつかった。

柴犬のハナちゃんの場合

 女の子(不妊手術)のハナちゃん(7歳齢)は、生後3か月齢から身体が痒くなり、特に目と口の周りが痒いようであった。生後半年からグルココルチコイドを使い始め、薬を飲んでいる間は良いが、止めるとまた痒くなっていた。シャンプーや食事療法などを試したが年々ひどくなって、特に目を爪でこするから目を傷つけてしまわないか心配だ。

表1. Farvotによる犬アトピー性皮膚炎の基準2010

犬アトピー性皮膚炎(AD)に特徴的な症状(5つ以上あてはまるとかなり疑わしい)

  1. 1.3歳齢までに発症している
  2. 2.室内で生活している(散歩は行く)
  3. 3.痒いときグルココルチコイドでよくなる
  4. 4.痒いのに皮膚病変がない
  5. 5.前足に皮膚病変がある
  6. 6.耳に皮膚病変がある
  7. 7.耳の縁に皮膚病変はない
  8. 8.腰と背中に皮膚病変はない

資料2. 犬アトピー性皮膚炎国際調査委員会(International Task Force on Canine Atopic Dermatitis)による標準的治療ガイドライン2010

犬アトピー性皮膚炎の治療法

A. 急性の犬アトピー性皮膚炎に推奨される治療法

;推奨レベルはA-Fの6段階(Aが最も高く推奨され、Fが最も低い)

  1. 1.グルココルチコイドの塗り薬を短期使用(A)
  2. 2.グルココルチコイドの飲み薬を短期使用(A)
  3. 3.刺激の低いシャンプー(B)
  4. 4.悪化因子(ノミ、食事、環境アレルゲン)の同定と除去(D)
  5. 5.抗菌剤または抗真菌剤の薬剤(シャンプー、投薬、塗り薬)(D)

B. 急性犬アトピー性皮膚炎に推奨されない治療法

  1. 1.抗ヒスタミン剤の投薬
  2. 2.タクロリムスの投薬
  3. 3.シクロスポリンの投薬
  4. 4.必須脂肪酸サプリメント

C. 慢性犬アトピー性皮膚炎に推奨される治療法

;推奨レベルはA-Fの6段階( Aが最も高く推奨され、Fが最も低い)

  1. 1.グルココルチコイドの塗り薬(A)
  2. 2.タクロリムスの塗り薬(A)
  3. 3.グルココルチコイドの飲み薬(A)
  4. 4.シクロスポリンの飲み薬(A)
  5. 5.インターフェロンガンマの注射(A)
  6. 6.アレルゲン特異的免疫療法(予防として有効)(A)
  7. 7.必須脂肪酸の投与(B)
  8. 8.血清中アレルゲン特異的IgE検査、皮内反応検査(C)
  9. 9.環境中のハウスダストマイトへの対応(C)
  10. 10.除去食および暴露試験の実施(D)
  11. 11.ノミ予防と駆除(D)
  12. 12.日常的な抗菌剤または抗真菌剤の全身投与(D)
  13. 13.環境および精神的な増悪因子の評価(D)
  14. 14.刺激の低いシャンプー(D)

皮膚の腫瘍

8. 皮膚の腫瘍

7.腫瘍(しゅよう)

 中齢から高齢になると皮膚にできものができることが多くなります。 動物の体に触ったときに、手に何かが触れて気づくようです。病院での検査は、最初に細い針を刺して細胞を調べます。この検査を細胞診といいます。細胞診で悪い細胞が見つかれば、できるだけ早く手術した方がよいでしょう。悪い細胞が見つからなくとも、針で吸った細胞だけの検査なので、悪性ではないと言い切ることができません。できものは小さなうちに手術で切除することが基本で、切除したものを病理組織検査をして悪性か良性かを判断します。犬猫の皮膚のできものでよくみられるものを紹介します。

8-1.犬の腫瘍

8-1-1.毛包嚢胞(もうほうのうほう)

直径0.5-2.0cm程の腫瘤(しゅりゅう;できもののこと)で皮膚の中に塊を感じることができます。動かすと皮膚と一緒に動きます。腫瘤がつぶれると中からクリーム色の腐ったチーズのようなものが出てきます。出血することもあります。大きなものや,破裂したものは外科的に切除したほうがよいでしょう。シーズー犬など体質で多発することもあります。また汗腺の嚢胞は中に透明の液体を含み,やはり外科的に切除するのがよいのですが,定期的に嚢胞中の液体を抜くだけの場合もあります。

8-1-2.皮脂腺過形成

汗腺の一種の脂腺がたくさん増えすぎて塊になることがあります。年をとるとなりやすく,多発する傾向があります。大きさも小さく腫瘍ではありません。ただ,出血や化膿がみられたら外科摘出したほうが良いでしょう。

8-1-3.皮脂腺上皮腫

汗腺の一種の脂腺が腫瘍化して塊となって増えたものです。上の皮脂腺過形成は腫瘍ではありませんが,皮脂腺上皮腫は低グレードの悪性腫瘍です。大きさも1cm以上ありますが,多発することは少ないようです。頭によくみられます。早期に外科的に切除するのがよく,再発転移はまれにみられます。

8-1-4.皮脂腺癌

汗腺の一種の脂腺が腫瘍化して塊となって増えたものです。皮脂腺上皮腫は悪性腫瘍ではありますが低グレードのため、発生初期に適切な外科手術で治癒しますが、皮脂腺癌は、悪性度が強い腫瘍であるため、手術をしても再発、転移が見られます。治療の基本は早期発見、早期切除です。非常にまれな腫瘍です。

8-1-5.肛門周囲腺腫瘍

肛門周囲腺過形成、肛門周囲腺上皮腫、肛門周囲腺癌

肛門嚢は肛門の両脇にある1対の袋です。くさい分泌液がたまり,便をしたときに自分の臭いをつけます。動物が互いにおしりの臭いを嗅ぐのはこの臭いを確認しているのです。この腫瘍は男性ホルモンの影響を受けるため去勢手術が同時に必要です。大きい腫瘍の場合,肛門括約筋を腫瘍と一緒に摘出しなければならないことがあり,術後,一時的に、排便を自分でコントロールする事が難しくなることがあります。腫瘤が小さいうちに外科摘出するのがよいでしょう。

8-1-6.肥満細胞腫

犬の肥満細胞腫は全て悪性と考える必要があります。獣医師ならば誰でもこの腫瘍が決して油断のならない悪性腫瘍であることを知っているので,きわめて慎重に治療に当たります。ところが人ではほとんどみられないか,あってもとるに足らない腫瘍であるため人医師に相談した場合,「たいしたことないよ」などと助言されたりします。犬では他の皮膚腫瘍の中でもきわめて悪性の挙動をとるため注意が必要です。治療は基本的には外科摘出ですが,再発転移が頻繁に起こるため広範囲に外科摘出しなければなりません。広範囲に摘出できない四肢などに発生した肥満細胞腫は再発転移が高率に起こります。獣医師によっては、初診で断脚を薦めることもあります。どちらがよいとはいえないため、獣医師とご家族が十分に話し合う時間が必要です。摘出腫瘍の病理検査でグレードを決定し,悪性度によっては放射線療法や化学療法を併用することもあります。

8-1-7.皮膚組織球腫

この腫瘍は頭,特に耳によく発生します。次いで四肢にもよくみられます。外科切除で術後は良好です。しかし、悪性の場合、経過が早く、治療法がほとんどありません。多発している場合、皮膚組織球症というべつな疾患が疑われます。内臓に組織球性の腫瘍塊がみられたとき、悪性組織球腫という診断になり致死的です。

8-1-8.脂肪腫

この腫瘍は胸,腹でよく発生がみられます。さわると柔らかく,飼い主も「脂肪の塊みたい」といって来院されることが多いようです。ほとんどが外科摘出できるのですが,多発性のため、手術をしても、次から次と腫瘍が発生します。初回の手術は脂肪腫と診断を確定するための手術と考えます。良性腫瘍とわかったならば、次回からは、腫瘍が発生してもすぐに手術せず時間をおくか、数が多くなるのを待つか、大きくなるまで様子を見ることもあります。ただし、浸潤性の脂肪腫の場合,正常の脂肪と腫瘍の脂肪の見極めが難しく,浸潤・再発することがたびたびあります。再発した場合,早期の再手術が必要です。

8-1-9.血管外膜細胞腫

この腫瘍は四肢の関節の近くに発生し,浸潤性に発生するため広範囲の切除が必要です。しかし,四肢では広範囲の切除ができないため,しばしば再発します。再発を繰り返すうちに肺などに転移することがあります。

8-1-10.乳腺腫瘍

悪性の癌と良性腫瘍があります(犬では半分ずつ。猫ではほとんどが悪性の癌です)。針で細胞を検査して良性か悪性かを判定し,外科摘出する範囲を決定します。手術前に血液検査や肺のレントゲン検査が必要です。一個だけ、小さい良性腫瘍が発生していた場合、部分切除することもあります。しかし、ほとんどの場合、腫瘍が発生している側の乳腺を片側全て、もしくは両側乳腺全てを切除するように勧められます。理由は、乳腺腫瘍は多発する傾向があり,良性のものと癌とが混在することが多いのです。今回良性でも,乳腺を残しておくと癌が他の場所に発生する危険性があります。かわいそうですがよく先生と相談し手術方法を決定してください。最初の発情前に、不妊手術をしていれば、かなりの高い率で乳腺腫瘍の発生の予防になりますが、3回目以降の発情後に不妊手術した場合、しない場合と比べて乳腺腫瘍発生率に大きな差はありません。ただし、手術をしてから2年以降に乳腺腫瘍が発生した場合と、2年以内に乳腺腫瘍が発生した場合は、以降の生命予後に影響があるようです。そのような理由から、卵巣の摘出手術も勧められます。

8-2.猫の腫瘍

7-2-1.基底細胞腫

頭と首でよくみられます。外科切除で良好に経過しますが,悪性の基底細胞癌と混在することがあるため,広範囲の外科的切除が必要です。

8-2-2.扁平上皮癌

頭,特に耳でよく発生がみられます。原因は紫外線です。広範囲の外科摘出が必要でそれができないような場所,例えば鼻や目尻などでは再発しやすくなります。耳にできた場合,耳の根本から切除します。早期に摘出できれば再発の可能性は少ないでしょう。口腔内にもしばしば発生します。

8-2-3.線維肉腫

この腫瘍が頭部,背,四肢に発生した場合,十分に広範囲摘出を行っても再発することが多く,手術後もあまり長く生きるのは難しいようです。

8-2-4.肥満細胞腫

猫の肥満細胞腫は犬に比べ発生は少ないようです。腫瘍が1個だけの場合,外科摘出の後,比較的長期に生活できます。多発する場合や再発する場合は詳しい検査が必要です.内臓(脾臓,消化器)に発生することもあり,脾臓の摘出手術を勧められることがあるでしょう.手術がうまくいけば,術後,1年以上生存することも出来ます.

皮膚の仕組みと薬用シャンプーの使い方

9. 皮膚の仕組みと薬用シャンプーの使い方

2017日本臨床獣医学フォーラム(ニューオータニ東京)2017.9.17 

The 皮膚病 実践!皮膚病ケアのアドバイス

皮膚のしくみと薬用シャンプーの使い方

Learn more about Structure of the Skin and Medicated Shampoo

太刀川史郎

たちかわ動物病院(神奈川県)

講演の目的

1.    皮膚の仕組みと働きについて学ぼう

2.    薬用シャンプーの使い方について学ぼう

キーポイント

1.    皮膚の役割は,保湿とバリア機能だ

2.    薬用シャンプーは皮膚の保湿とバリア機能を助けるために使う

クライアント指導の要点

 薬用シャンプーは,体と被毛についた汚れを落とすことだけが目的ではない.

薬用シャンプーは皮膚病の治療薬のひとつである.皮膚病の原因は様々で,原因によって治療法は異なる.皮膚病は皮膚角質の異常などによって,細菌,真菌,酵母,寄生虫などの感染症,アレルギー,脂漏症などが引き起こされるので適切な薬用シャンプーを選択しなければならない.体の部位によって,季節によって使用する薬用シャンプーは異なるため,獣医師の診察が必要なことをご家族に説明しなければならない.

要約

 皮膚の大事な役割は保湿とバリア機能である.表皮角質層が水分を保持するためにはアミノ酸などの天然保湿因子や,セラミドなどの細胞間脂質が重要である.保湿が十分でないと皮膚が乾燥し,感染やアレルギーなどが生じる原因となる.皮膚病が生じたときに薬用シャンプーが処方されるが,皮膚病の原因やその目的によって使用される薬用シャンプーは異なる.本講演では,皮膚の仕組みを理解し,適切な薬用シャンプーの使い方を学ぶ.

キーワード:皮膚の仕組み バリア機能 保湿 薬用シャンプー

1. 皮膚の仕組みと働きについて

「皮膚は水分を保持し,体を守るバリアの役目がある」

 皮膚は体内の水分蒸発を防ぐため粘膜が変化した組織であり,体を守るバリア機能も有している.皮膚は水の中の生活から陸への生活に変わったことで獲得した進化の結果である.

 皮膚は3層からなり,外部と接している最外側を表皮,その下に真皮,そして皮下組織に分けられる.これらの層は解剖学的に発生が異なるため境界明瞭でその機能も異なる.表皮と真皮は基底膜により境界がはっきりとしている.表皮は上皮組織のひとつである角化重層扁平上皮と呼ばれ,真皮は結合組織から成る.表皮と真皮の境界部は直線ではなく波状で,指と指が重なったような構造を示し,基底膜の下にはコラーゲン線維が半フック状に存在し,真皮のコラーゲン線維と強固に結合している.これは表皮と真皮が簡単にはがれないよう摩擦やズレに対応しているものと考えられている.そして,真皮に存在する汗腺,脂腺,毛包は表皮を貫通して外界への通り道となっている.不思議なことに表皮に血管はなく,その意味するところは表皮までの傷であれば出血しない,ということである.皮膚は粘膜から変化したと説明したが,粘膜は脆く出血しやすいが,皮膚はぶつけたり,こすったり,引っ掻いたりしたぐらいで出血しないような構造に進化し陸の生活に適応している.表皮はさらに4層からなり,外側から角質層,顆粒層,有棘層,基底層に分けられる.皮膚の最も重要な働きはバリア機能であり,表皮最外層の角質層がその役目の大部分を担っており,空気による乾燥から細胞を守っている.角質層の内側の顆粒層は細胞と細胞の隙間をぴったりとシールするタイトジャンクションと呼ばれるバリア機能を持つ.表皮の95%(80-95%)がケラチノサイト(表皮角化細胞)と呼ばれる細胞によって構成され,自己再生,ターンオーバーを繰り返し,最終的に皮膚最外層である角質層を形成する.角質層の細胞はケラチノサイトと区別されコルネオサイトとも呼称される.コルネオサイトは細胞核が自己消化され,細胞学的には死細胞となり,固く,鎧のように皮膚最外層を被う.役目を終えたコルネオサイトは皮膚から脱落し,一般に「フケ」と呼ばれ垢(アカ)となる.フケは不潔の代名詞みたいに思われているが,実は我々の体を守ったバリアの残骸なのだ.角質層は酸に対しては抵抗があるが,アルカリ(石けん水など)

状態では膨化する.角質形成はビタミンAにより調節されているので,ビタミンAが不足すると過剰な角質形成が起こる.

 表皮を構成する細胞はほかにメラニン細胞,ランゲルハンス細胞,メルケル細胞がある.メラニン細胞は基底層に存在し,通常は紡錘状だが紫外線などの刺激を受けると活性化し,アメーバのように形を変え,木の枝を拡げたような樹状突起と呼ばれる触手が細胞間隙を通り有棘層の中層まで達している.メラニン細胞はメラノソーム内でメラニンと呼ばれる黒色顆粒を産生する.樹状突起先端に移動したメラニンを含有したメラノソームは突起ごとケラチノサイトに取り込まれ(エンドサイトーシス),細胞核の上に集まり,あたかも傘をさしているかのように核帽(メラニンキャップ)を形成して核のDNAを紫外線から守る役目をする.ランゲルハンス細胞は免疫に関与し,メルケル細胞は触覚を伝える神経の末端部に存在し,表皮の上からの圧力や側面からの引っぱりによる皮膚表面の変形を感じる感覚器官として働く.

「ターンオーバー」

 角化細胞が基底細胞層で分裂し,最終的にフケとなって脱落していく過程をターンオーバーという.ターンオーバーが促進されると脱落する角化細胞が増え,未熟な角化細胞が外界にさらされるようになる.これは皮膚バリア機能が低下することを意味しており,乾燥,感染,アレルギーなどが生じやすくなる.

「角質層には絶えず水分が補給されている」

 皮膚の水分含有量は約70%で,皮膚最外層の角質層は20-30%といわれる.角質層へは体内から絶えず水分が供給され,角質層表面から外界に水分が蒸発している.角質細胞内にはアミノ酸などの天然保湿因子(NMF)が存在し,水分を保持し,吸収する能力を持っている.角質層の水分保持機能は,最外層で低く,中層で高く,下層で低い.下層で低い理由は,下層の角質層細胞は新人のため天然の保湿因子が少ないためである.ターンオーバーが早くなると皮膚が乾燥しやすくなるのはこの理由のためである. 角質細胞表面はタンパク質の膜で覆われ,そこにセラミド,コレステロール,遊離脂肪酸が結合し,細胞間脂質を形成する.細胞間脂質の量と肌の状態は関係性が大きく,角質細胞がレンガで細胞間脂質がセメントに例えられる.角質層の水分のほとんどが角質細胞内にあるが,細胞間脂質を作る脂質層間に少量の水(水層)がにじみ出ているという研究がある.

 角質層の真下の顆粒層の水分含有量は高く,顆粒層で細胞接着に寄与しているタイトジャンクションが,皮膚中の水分保持機能において重要な役割を果たしていると考えられている.

 水分保持機能に影響を及ぼすのは,外気の乾燥,紫外線,ストレス,加齢などがある.加齢で皮膚が乾燥しやすくなる理由は,老化でターンオーバーは延長しやすくなるため,角質層の層数が増し,体内から補給される水分が減り,水分保持機能も低下することから乾燥しやすくなる.

 

「天然保湿因子(ナチュラル・モイスチャライジング・ファクター:NMF)」

 健康な角質層中の水分は20-30%といわれ,20%より少なくなると乾燥が目立つようになる.角質細胞間脂質のセラミド,コレステロール,遊離脂肪酸や,天然保湿因子のアミノ酸,乳酸,ピロリドンカルボン酸(PCA),尿素,ヒアルロン酸は水と結合し,皮膚表面を柔軟で滑らかにしている.角質細胞間脂質や天然保湿因子が少なくなると,皮膚は乾燥し,硬くなり,ひび割れを起こし,環境中の異物タンパク質が表皮から真皮に侵入してアレルギー反応を起こすようになり,細菌などの感染も起こりやすくなる.天然保湿因子はpH保持にも関与し,周囲のpHを下げる作用があるため,保湿因子が十分でないと皮膚環境のpHが上昇する.pHが上昇すると,細胞間を接着する役割を持つデスモゾームが破壊されやすくなり,角質細胞をとりまく脂肪層を構成するセラミドの産生も低下する.アトピー性皮膚炎の患者では,健常者の皮膚に比べセラミドが著しく少なく,経皮水分蒸発量が多いことから,細胞間脂質の減少と皮膚バリア機能の低下は関連しているといわれる.セラミドの分解産物であるスフィンゴシンは抗菌ペプチドとしての役割があり,一部の薬用シャンプーに含まれている.

「皮膚は体の場所で異なる機能を持つ」

 皮膚はどこでも基本的に同じ構造だが,体の場所によって,表皮の厚さ,強度,柔軟性,被毛の密度と種類,腺の密度と種類,色素沈着,血管分布,神経分布が異なる.例えば,背中の皮膚と肉球の皮膚では機能の違いにより構造に大きな違いが見られる.このことは体の部位によってもシャンプーの種類(機能)を変えなければならないことを意味している.

2.      薬用シャンプーの種類と働き

「保湿作用」体の水分を皮膚表面に吸い上げ,皮膚を浸潤させる.

乳酸ナトリウム,尿素,カルボキシル酸,プロピレングリコール,グリセリン,コロイドオートミール,ソルビトール,

「軟化作用」ケラチノサイト間に脂質を補給する.

植物性油脂(ココナッツオイル,アーモンドオイル,サフラワーオイル,オリーブオイル),動物性油脂(ラノリン)

「抗菌作用」細菌性膿皮症に有効.

過酸化ベンゾイル,クロルへキシジン,ポピドンヨード,トリクロサン,乳酸エチル

「抗真菌作用」真菌性皮膚炎に有効.

クロルへキシジン,ポピドンヨード,硫黄,ケトコナゾール,ミコナゾール

「抗脂漏作用」余分な角質層を排除し,角質層の過剰な生成を抑える.

過酸化ベンゾイル,タール,サルチル酸,硫化セレニウム,フィトスフィンゴシン

「止痒作用」アトピー皮膚炎などによる痒みを抑える.

オートミール,ブラモキシン,コロイド状オーツ,アロエベラ,1%ヒドロコルチゾン

「殺ノミ」ノミなど外部寄生虫を駆除する.

有機リン系,ピレスロイド系

「薬効成分残留促進テクノロジー」

スフェルライト:植物由来の多層性界面活性剤で,直径1マイクロメートル(1mmの千分の1)のスフェルライト中に保湿成分,精油,水分,脂溶性ビタミンなどの有効成分が含まれ,それぞれの層が溶けるとともに8日以上かけてゆっくりと放出される.

3.    スキンケア

 薬用シャンプー剤を利用したスキンケアは動物に対する副作用が少なく,皮膚病の治療のひとつとして大事である.シャンプーテラピーは,アトピー性皮膚炎,細菌性皮膚炎,真菌性皮膚炎,皮膚の乾燥,フケ症,皮膚のベタベタ,止痒,殺ノミなどに効果を発揮する.シャンプセラピーは獣医師の正しい指導の元に行われなければならない.