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6.アレルギー性皮膚炎


6-1.食物アレルギー性皮膚炎

 食物アレルギーの原因となるのは蛋白質,炭水化物などで,よくいわれる防腐剤などに対するアレルギーは少ないようです。犬は顔や,脇から下腹部にかけて,猫では顔を中心に痒みがみられます。アレルギーの原因となる食事成分は、血液検査である程度わかりますが、完全に除去するのは非常に難しいでしょう。

 症状が軽い場合には、アレルギー専用の病院用処方食を使用します。それでも痒みが続くようなら、 今まで食べたことのない食事だけを3週間ほど続けて、腸をきれいにしてから、1種類づつ何かを足していきます。そうやって根気強く,食べても大丈夫な食品を探していきます。痒みがひどい場合は ステロイドや抗ヒスタミン剤などを使用することもあります.


6-2.ノミアレルギー性皮膚炎

 ノミが吸血するときに、犬猫の体内にノミの唾液が残り、それがある程度蓄積するとノミアレルギー性皮膚炎が発症します。ノミアレルギー性皮膚炎は発症する犬猫と発症しないものがいます。ここら辺が理解しにくいので診察室では「ビール」に例えて説明しています。ビールをコップ1杯飲んだだけでも酔っぱらってしまう人もいれば,10杯飲んでも平気という人もいるのと同じす。つまり個体差があって,アレルギーの許容量が動物によって違うのです。ノミ1匹分の唾液でもアレルギーが起こることもあれば,ノミ10匹分でも平気な場合もあるのです。

 ノミアレルギー性皮膚炎の症状は、主に腰背部にブツブツやカサカサがみられ,非常に強い痒みを伴います。掻き崩して細菌が感染してグチュグチュに赤くただれてしまうこともあります。毛が抜けてバサバサになることもあります。

 診断はノミを見つければよいのですが,吸血したノミはどこかにいってしまうので、ノミがたくさんいないと見つからないこともあります。皮膚病にあまり詳しくない病院ではノミがいないからノミアレルギー性皮膚炎ではないと診断されることがよくありますし、ノミも見つからず、飼い主さんが「うちの子にノミなんかいるわけない」と言い張られるとなかなかノミアレルギーとはいえなくなります。

 治療はノミの完全な駆除が必要です。そして,ステロイドが3週間程度必要になります。ノミの予防をずっとさぼっているとある程度年齢がいってから発症します。こういう場合,ほとんどの飼い主さんはため息混じりにこういいます。「今まで平気だったのに」。そうです。ビール一杯で酔っぱらうことがなかったとしても、今がビールを10杯飲んで酔っぱらってしまった状態なのです。


6-3アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎は強い痒みを伴います。こすったり,掻き崩して,細菌が増殖すると皮膚炎がよりいっそうひどくなります。病変は眼周囲,口唇周囲,喉,脇の下,股,指の間によくみられます。

 治療はシャンプーとステロイドを中心に,抗ヒスタミン剤や脂肪酸製剤を補助的に使用します。食事管理を取り入れることも大事です。アトピーというのは体質なので治ることはありません.ですから,完治を目指すよりバランスを取ることが大事です.特に,ノミアレルギー,食事アレルギーなどが合併すると痒みがひどくなりますので,トータルでの判断がとても大事です.治療は、ステロイドが中心となりますが,いかにステロイドの量を減らしてうまくコントロールしていくか,ということです.ステロイドの量を少なくするには家族の協力が不可欠です。適切なシャンプー療法とスキンケア,食事と環境の改善、そして投薬療法です。

 治療で大事なのは、軽度でも痒みが出たら、掻き崩す前にステロイドを使うことです。痒みが強くなってからステロイドを使うより、結果的にステロイドの使用量を減らすことができるのです。犬種的に柴犬やシーズー犬はアトピー体質で,ステロイドを使わないと痒みが抑えられないことが多いようです。最近では、副作用の少ない免疫抑制剤が発売されていますが、高価なのが残念です。

 減感作療法とは、アレルギーの原因となっている物質(花粉やダニなど)を体に少しずつ注射して体に慣れされるという方法です。この治療はアトピー性皮膚炎を「治す」治療を意味する根治療法です。治療の基本は早期発見、早期治療が原則で、アトピー性皮膚炎も、皮膚の状態がひどくなってから減感作療法を行うよりも、酷くなる前に診断し治療を開始する事が大事です。減感作治療をご希望の方は診察時にそのようにお伝え下さい。


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