たちかわ動物病院・皮膚科 頭部の皮膚炎


1. 頭部に主な症状がある。


1-1. 耳のあたりがかゆい

頭を振ったり、耳をこすったり、掻いたりしていますか?耳の中をみてください。耳あかで汚れたり、変な臭いはしませんか?耳にボツボツや,脱毛などがありませんか?次にあげた病気の可能性があります。


1-1-1. 外耳炎

耳の中に異物が入ると炎症が起こります。異物とはシャンプー、水、虫、草の種、砂などです。梅雨時から夏場にかけては,耳の中が蒸れて細菌やカビが繁殖して炎症を起こし易くなります。頭を激しく振ったり、手足で激しく掻くと耳が傷ついて炎症がさらにひどくなります。通常は一時的なもので何回か耳を治療すれば治りますが、細菌やマラセチアという酵母菌が異常繁殖した場合、抗生物質や抗酵母菌薬が必要です。炎症がひどい時にゴシゴシこすったり、耳毛を抜くとさらに炎症がひどくなります。外耳炎はとても痛い病気なので炎症がある間(赤くなっている時)はあまり耳を触らないようにしましょう。痛いときに痛いことをすると、普段から耳掃除ができなくなってしまいます。病院で炎症止めの治療をしてもらいましょう。また、耳の中に目に見えない小さなダニが寄生することもあります。黒くて乾いた耳アカをたくさんみつけたら、耳ダニの検査をしてもらいましょう。耳ダニがいたら1—2週間おきに耳ダニを殺す薬をつけます。耳ダニに対するアレルギーが起こると、治療後1か月以上も痒みが持続することがあるので、根気強く病院に通いましょう。


1-1-2. 中耳炎、内耳炎

鼓膜から外側を外耳、鼓膜から内側は中耳と内耳にわけられます。しつこい外耳炎の場合、中耳炎もしくは内耳炎を同時に起こしていることがあります。その場合,しつこい耳ダレ(耳のあたりをさわるとグチュグチュと音がする)と痛みがみられます。動物は頭を傾けていることがあります。耳の中を洗浄する場合は痛くてじっと我慢できないので全身麻酔が必要です。治るまで数ヶ月かかるので根気も必要です。大変ですががんばりましょう。


1-1-3. アレルギー性外耳炎

人の花粉症では鼻水や涙、クシャミが止まらなくなりますが、犬のアレルギーでは耳ダレが症状として多くみられます。鼻水はティッシュでチーンして出すことができますが、耳ダレは耳の中に貯まり細菌やカビが繁殖します。犬は耳を振ったり、手足で引っ掻くため傷ついてより強く炎症が起こります。再発性の外耳炎はアレルギーが関係していることが多いようです。治療は耳の中をきれいにすることが大事です。病院で耳の洗浄液をもらって,耳ダレをふきとりましょう。耳の中に洗浄液を直接入れるのはよくありません。再発性の外耳炎の場合,鼓膜が破れている場合が多く,洗浄液をいれると耳の奥の方に液が入ってしまい、中耳炎や内耳炎を合併し、かえってひどくなるからです。必ずティッシュかコットンを洗浄液で湿らせて丁寧にふき取ります。定期的に通院して,耳の中をチェックしてもらいましょう。炎症がひどい場合は抗生物質や抗酵母菌薬を使います。炎症が強い場合、早めにステロイドを使うと治りやすくなります。塗り薬と飲み薬がありますので,程度に応じて使い分けます。また食事も大きく影響し,アレルギー体質用のフードに変えた方がよくなることが多いようです。


1-1-4. 耳血腫

外耳炎で耳を振ったり、引っ掻いたりしてるうちに耳の血管が破れて、耳に血腫ができる病気です。大きな血腫の場合、手術して切開する必要があるでしょう。切開後も出血が続くため、しばらく包帯が必要です。血腫のできたところを縫合して耳の表側と裏側が癒合するようにしますが、再発しやすいので、何度か手術が必要になることもあります。治癒後は耳の形が変形しますので,耳がピンと立っている子は注意が必要です。


1-1-5. 蚊に刺されて

蚊は毛のない耳をねらって血を吸います。耳を蚊に食われたことはありますか?痒いってもんじゃないですよ。ほんとに。


1-1-6. 耳のポリープ、腫瘍

耳の中にポリープや腫瘍ができることがあります。耳先に腫瘍ができた場合、耳たぶを根本から切除しなければならないことがあります。


1-1-7. 耳の縁の黒いカス

ダックスフントやビーグルのような垂れ耳の犬でみられます。あぶらっぽい黒い汚れがこびりついてます。毛も抜けてしまいます。病院で診察してから薬用シャンプーで洗います。あまりゴシゴシ洗うと赤くただれてしまいます。


1-1-8. 耳の毛が薄くなってきた

ダックスフント,チワワにみられます。耳の毛だけが薄くなります。原因は不明で,両耳の毛が何年もかけてゆっくりと薄くなっていく場合もあれば、突然、薄くなる子もいます。毛が薄くなるのは寂しいですが,痒みがなければ本人は気にしません。シャム猫にもみられます。


1-1-9. 耳がちぎれて落ちた

人間でいう、しもやけみたいなことが耳で起こることがあります。気温が下がると耳の先に血栓ができて血管がつまり、耳先が腐って落ちてしまう特殊な病気です。


1-1-10. 耳にふけのようなものと、ブツブツがある

膿皮症といって皮膚表面が化膿しているかもしれません。細菌感染や、自己免疫性疾患の場合があります。猫で耳から顔にかけて厚いカサブタができて痒みも強いときは,疥癬(かいせん)という皮膚に寄生するダニが一番に考えられます.


1-2. 口のまわりがおかしい

口がくさい、口をよくこすってる、唇周囲が赤い,汚れがある,ヨダレが多いなど、口の周りに異常はありませんか?


1-2-1. 口の周りが臭い

口の周りは常に湿っぽいため、細菌が繁殖しやすいようです。ひどくすると、潰瘍やビランがみられます。薬を塗ってもなめてしまうので、なかなか治りにくい場所です。特に大型犬で唇がダラーンしている犬種でにおいが強く感じられます。薬用シャンプーと塗り薬を根気強く続ける必要があります。


1-2-2. 口の中が臭い

歯石や歯周病が原因で、口内炎ができてるかもしれません。歯が悪く歯槽膿漏になっているかもしれません。固いものや、しみるものを食べたとき痛がってませんか?ヨダレを垂らすことが多くありませんか?口の中をのぞけたらみてみましょう。また、人と同じように口内炎は胃が悪かったり、ストレスでなることがあります。潜在的な病気を持っていることもあります。猫の場合はウィルス感染で口内炎ができることがあります。


1-2-3. 歯石

歯に食べ物のカスがこびりついて,それが細菌の作用で石みたいに固くなったのが歯石です。歯石は細菌の巣です。歯石が増えると歯石の中の増殖した歯石を唾液と一緒に飲み込んで、歯石が全身を回って,腎臓や心臓に少しづつ巣を作ります。すると腎臓や心臓の病気になりやすくなります。また,歯が弱くては長生きできません。定期的に歯の検診をしましょう。


1-2-4. 口臭が強い

胃炎や気管支炎があると、吐く息が臭くなります。嘔吐したり、咳をしたりしていませんか?病院で詳しく身体検査してもらってください。


1-2-5. 歯肉炎(歯ぐきの炎症)

唇をまくって、歯ぐきをみてみましょう。歯ぐきが赤くなっていたら、歯周炎といって、歯ぐきの炎症を起こしているかもしれません。ほっとくと細菌が歯の根本で増殖して歯がぐらぐらになってしまいます。食後の歯磨きを習慣づけるようにしましょう。


1-2-6. 歯肉出血

リンゴをかじって歯ぐきから出血しませんか?というコマーシャルが何年か前にありました。あれは歯周炎で弱った歯ぐきから出血しているのです。病院で診てもらう必要があります。また、点状の出血が歯ぐきにみられることがあります。これは血液の病気や、血が止まらなくなる病気の可能性もあります。歯肉からの出血は怖い病気があるので毎日歯磨きするときに、必ず歯ぐきもチェックするようにしましょう。


1-2-7. ヨダレが多い

歯の間に何かが引っかかっていたり、歯石がたまっていたり、口内炎-歯周炎があったり、唾液腺の炎症があったり、気持ちが悪いとヨダレがが多くなります。もちろん、ごはんを「待て」してるときも、ヨダレはたくさんでてきます。


1-2-8. 唇の炎症

特に猫で好酸球性潰瘍といって白血球の一種の好酸球が唇をとかしてしまう病気があります。原因はよくわかっていませんが,食事やアトピー性皮膚炎が原因として疑われています。治療はステロイドを使用することが多いのですが、薬がきれると再発します。


1-3. 顎に黒い汚れが

猫では顎から皮脂が出るので、黒くこびりついて「アクネ」と呼ばれます。ひどくすると細菌が繁殖して炎症を起こしてしまいます。また、汚れているからといってシャンプーでゴシゴシこするとかえって炎症が強くなります。病院で治療してもらいましょう。


1-4. 目がおかしい

目の周りが湿っていたり、目やにがいつもより多かったり、目の色が変だったり、掻いたりこすったりしていませんか?


1-4-1. 涙やけ

目の周りが涙で湿ってじゅくじゅくすることがあります。目の大きなシーズーや、涙管がつまりやすいプードルでよくみられます。いわゆる、涙やけといわれるものです。一日に何回か目ヤニをとってあげましょう。炎症や臭いがひどい場合,治療が必要になることもあります。市販の消毒薬はアルコールが入っているものがありますので、決して目の回りに使用するのはやめましょう。


1-4-2. 目の回り

目の周りの毛穴で小さなダニ(ニキビダニ)が見つかることがあります。特に子犬で目の回りにブツブツできてるときは注意します。病院で検査してもらいましょう。ダニは小さいので1回の検査では発見することが難しいので,何回か検査する必要があります。また,臨床的に疑わしいときは診断的にダニを殺す薬を使って様子を見ることもあります。


1-4-3. 目の周りから鼻にかけて

ブツブツやカサカサができることがあります。顔全体がブツブツ、カサカサしている場合は自己免疫性疾患の場合があります。


1-4-4. 目が赤い

涙や目ヤニが出て、目が赤く見えるときがあります。白目が赤いときは結膜炎、目の中心が赤いときは眼球炎の可能性があります。


1-4-5. 目がグリーンに見える

瞳孔が開いて眼球の奥がみえると、グリーンに見えます。暗いところでは瞳孔が開くので正常ですが、明るいところでもグリーンに見えるときは緑内障の可能性があります。


1-4-6. 目が白っぽく見える、目に膜が張ったように見える

白内障といって、目のレンズが濁ってしまう病気があります。ほとんどが年をとってから起こる病気ですが、若年性白内障といって、特に若い純血犬種でおこることがあります。また、角膜(目の表面)に炎症が起こると、角膜が白濁し、目が白く見えたり、膜を張ったように見えることがあります。アレルギーで目が腫れぼったくなって膜が張ったように見えるときもあります。その場合,痒みを伴います。


1-5. 鼻がおかしい

鼻は臭いをかいだり、物をいじったりするときに大事な役目をします。そのため、ぶつかったり、虫に刺されたりと擦り傷がたえません。また、鼻にみられる特殊な病気も多いです。


1-5-1. 鼻の炎症

穴を掘ったりしたときに、擦れたりして、炎症を起こすことが多いようです。また、臭いをかごうとして、たとえば蜂や毒虫に刺されることもあります。

カサカサしているときは角化亢進といって、皮膚表面が厚くなる病気です。日光性皮膚炎で皮膚がカサカサ、ジュクジュクしてるのかもしれません。


1-5-2. 鼻の色が変わった

通常、大人になるに従って、色は薄くなっていきます。子供の時黒かったのに、だんだんとピンクに変わっていきます。また、特に女の子で、発情期に色が変わることがあるようです。もちろん、病気で色がうすくなることもあります。その場合は、たとえば毛の色が薄くなるとか、他の部位でも異常を伴うことが多いようです。


1-5-3. 鼻が乾いてる

寝てるときや眠いときは鼻は乾いています。元気に遊んでるときは濡れています。調子が悪かったり、熱があるときは起おきている時でも鼻は乾いています。そういうときは見た目にも調子が悪そうです。すぐに病院で診察してもらいましょう。


1-5-4. 鼻水

動物は透明な鼻水をよく垂らしています。でも、ボタボタと大量に出ていたり、クリームから緑色に変わってきたら鼻の中に炎症があるかもしれません。赤いときは鼻出血があるのです。また、蓄膿症といって鼻の奥の方の副鼻腔というところに膿瘍があるかもしれません。悪性のウィルス病に感染しているかもしれません。上顎の歯槽膿漏で膿が鼻から出てくることもあります。レントゲン検査や内視鏡で検査してもらいましょう。


1-5-5. くしゃみ

鼻の中がムズムズするとくしゃみが出ます。花粉の季節や、水やゴミが鼻に入ったり、あるいは上顎の歯槽膿漏で鼻がムズムズしてるのかもしれません。


1-5-6. 鼻の発作

寝ていたり、暖かい部屋から冷たい外に出たとき、水を飲んでいるときに、突然鼻か喉に何か詰まったようにフゴー、フゴー、と苦しがることがあります。鼻痙攣や逆クシャミと呼ばれる症状で、くしゃみの逆です。くしゃみはハックションと息を吐き出しますが、逆クシャミは息を吸い込みながらの発作です。ビデオにとって病院で診てもらいましょう。しばらくほっておけば治りますが、中には呼吸ができなくて倒れてしまうこともあります。発作がひどい場合は、手術が必要です。肥満に伴って起こり易くなりますが、短頭種では肥満していなくても起こります。


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