皮膚の寄生虫
4-1-1.ノミの生態
4-1-1-1.驚異的なノミの繁殖力
10匹のノミは1カ月で2000匹に増えます。ノミの巣には9万個の卵と10数万匹の幼虫がうごめきます。
4-1-1-2.ノミはどこからうつってくるの
ノミは他の犬猫や草むらからうつります。トリミングやホテルに預けると、ノミの予防をしてないワンちゃん、猫ちゃんからうつります。病院に入院するときもノミの予防をしてあるかどうかを確認する病院がよい病院です。
4-1-1-3.ノミの巣
室内ではじゅうたん、畳、家具、冷蔵庫の裏にノミの巣ができます。屋外では犬小屋の下、毛布の下に巣を作ります。動物の寝場所やホコリのたまりやすい場所は特に念入りに掃除をしましょう。
4-1-1-4.ノミってどんな形
ノミを見たことのない方もたくさんいるようです。ノミはとても早く動くので見つけるのは難しいでしょう。ノミはみつけられなくても、ノミがいれば糞をしますので、ノミの糞を探してみましょう。背中から腰周辺の毛をかき分けて毛の根本をよくみてみましょう。糞は黒くて細かい垢のようにみえます。ノミの糞は血液からできているので水に浸したティッシュの上に載せるとティッシュが薄く赤く染まります。垢は赤くならないのですぐわかります。
4-1-2.人の被害
4-1-2-1.ノミは人の血も吸います
蚊に刺されるよりも痒く、治りにくいようです。寝ている間に足などをくわれたり、おなかの軟らかいところを刺されます。赤ちゃんや小さい子供がいる家庭では注意しましょう。
4-1-3.ペットの被害
4-1-3-1.貧血で倒れることがあります
ノミがたくさん寄生すると、毎日たくさん吸血され,出血したのと同じくらい血液を失ってしまいます。ひどい場合,輸血が必要なこともあります。
4-1-3-2.毛づやが悪くなります
吸血されると栄養が失われ、毛づやが悪くなります。痒いが強いので爪で引っ掻いたり、歯で噛んだりしてひどい皮膚病になります。
4-1-3-3.ノミの吸血と痒みでイライラします
常に痒いのでイライラして人を噛んだり吠えたりします。
4-1-3-4.ひっかいて化膿性皮膚炎になります
ノミにくわれると非常に痒く,爪で引っ掻いたり、歯で噛んだりして、皮膚が裂け、出血します。夏場はバイ菌が繁殖しやすく,グチュグチュして赤くただれて汁が出てきます。
4-1-3-5.ノミに吸血されてアレルギー性皮膚炎になります
ノミは吸血するときに自分の唾液を注入します。その唾液がアレルギーの原因となりますが,ある程度体内に蓄積しないとアレルギーは発症しません。一度、発症すると、ノミ以外にもアレルギー反応を起こし、治療にも数週間の時間がかかります。
4-1-3-6.ノミは寄生虫を媒介します
ノミがいると動物は身体を舐め、その時、ノミが口から体内に入ると、ノミからサナダムシという寄生虫が感染して、おなかの中で増えます。
4-1-4.ノミの予防
ノミの予防薬を使っているのに、なかなかノミがいなくならない場合は、使っている薬の効果が低いか、家の中(犬小屋も含めて)にノミの巣があるのかもしれません。ノミは卵を産んでどんどん増えていきますので、成虫だけを駆除しても、卵(ノミの巣)が残っていれば効果ありません。その場合、成虫を殺す薬と卵を殺す薬を同時に使うことをお勧めします。ノミを殺す薬は体に害がある物が多く、中毒を起こすこともあります。必ず獣医師に相談するようにしましょう。
4-2.ダニの駆除・予防
4-2.ダニの駆除・予防
4-2-1.ダニの感染経路
ダニは雨が降っている間は土の中に隠れていて、晴れると草の先まで登ってきて動物がやってくるのを待っています。雨上がりの晴れた翌日に草むらに入っていくと、小さなダニがいっぱいついてきますので、注意しましょう。猫は体をグルーミングできれいにするのでダニがついても食べてしまいます。犬は飼い主さんが見つけてびっくりして病院につれてくることが多いですね。吸血しているダニを無理に引っこ抜くと後ですごく腫れて痒くなります。できれば病院でとってもらいましょう。
4-2-2.ダニに注意
雨上がりの日は特に草むらに入らないように気をつけましょう。また、散歩から帰ってきたらブラッシングするかタオルで体を拭いてあげましょう。
4-2-3.ダニは病原体の運び屋です
ダニがたくさん寄生するとひどい貧血を起こしたり、痙攣を起こしたりします。ダニにかまれるとツツガ虫病という高熱が出る病気やバベシア症という赤血球を破壊する病気になることもあります。
4-2-4.ダニの予防
ほ乳類(人、犬、猫など)には害はなく、昆虫のみに効果のある殺ダニ剤を使用したものが安全でお勧めです。動物についたダニは、しばらく毛の上をフワフワと歩いて吸血する場所を探します。その間にダニは予防薬に触れて死んでしまいます。ダニの予防薬は動物用医薬品となりますので獣医師に相談しましょう。
4-3.疥癬(かいせん)
猫は猫小穿孔ヒゼンダニ(猫疥癬),犬は犬穿孔ヒゼンダニ(犬疥癬)が原因で,激しい痒みが特徴です。猫疥癬は人にはうつりませんが,犬疥癬はうつることがあります。犬疥癬と診断され,自分の皮膚にもポチポチと湿疹がみられたら人間の皮膚科病院に行きましょう。
4-4.耳疥癬(耳ダニ)
犬猫の耳の中に耳ヒゼンダニという耳ダニが寄生することがあります。肉眼ではほとんどわかりません。慣れた獣医師なら顕微鏡で確認する前に見つけられます。このダニはとても感染力が強いので他の動物から簡単に接触感染します。ダニがいなくなってからも数カ月間,耳ダニのアレルギーで痒みが持続することがあるので,根気強く病院に行きましょう。
4-5.シラミ
不衛生な環境で感染します。白いフケの様なものがある時は病院で獣医師に診てもらいましょう。
4-6.ハエウジ
皮膚病で汁が出ていたり、下痢がひどくておしりが汚れている場合などにハエが卵とウジを産み付けます。ウジは皮膚を食い破り,激しい皮膚炎を起こします。動物は毒血症で死んでしまうこともあります。
4-7.ニキビダニ
毛包虫ともいわれ,皮膚の毛穴に住んでいます。犬でも人でも健康な皮膚にも正常にみられます。通常は何ら問題ないのに体の抵抗力が弱いと発症します。犬でよくみられ,猫ではまれです。若い動物で,免疫力が未発達なときによくよくみられます。治療しなくとも動物の成長とともに自然に治ることが多いようです。中齢以降でみられた場合はちょっと問題です。通常,大人の免疫力が弱いというのは何らかの病気を持っているからです。潜在的な病気が隠れていないか精密検査が是非必要です。
4-1.ノミの駆除・予防
4. 皮膚の寄生虫
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